フランス人のフランス語

Il fait lourd, aujourd’hui. (今日は蒸し暑い)というフレーズを聞いたことがありますか?

このフレーズで使われている形容詞の「lourd(重い)」は、「空気が湿っていて重い」という印象を表しています。

「夏の蒸し暑い日」にかぎらず、「梅雨のようにじめじめとして不快な天気の日」にもフランス人が頻繁に使う表現ですが、フランス語の教材ではあまり見かけないようにも思います。

そして天気の悪い日は、Il fait mauvais.(天気が悪い)という表現がありますが、どちらかと言うとフランス人は、Il ne fait pas très beau.(あまり天気がよくない)という言い方を好むような印象があります。

天気の話ではなくなりますが、フランス語の教材では頻繁に見かけるのに、実際にはあまりフランス人が使わない表現、というのもあります。

たとえば、Comme ci comme ça.(まあまあです)という表現があります。

フランス語の教材では「お元気ですか?」と聞かれ、「まあまあです」のように答えるシチュエーションなどでよく見かけますが、実際にフランス人は、あまり調子がよくなくても軽めなトーンで 「ça va.」などと答えることの方が多いかもしれません。

ところで実際にフランス人が頻繁に使う表現の中には、厳密には「誤り」とされているものもあります。

たとえば、Je suis sur Paris.(パリにいます)という言い方があります。

正確なフランス語としては、Je suis à Paris. のように前置詞は「à」となりますが、電話や会話の中でフランス人の若者が、Je suis sur Paris.(パリにいるよ)と言っているのをよく耳にします。

実際にフランス人に聞いてみると、Je suis à Paris. は「パリの中心」というイメージに対して、

Je suis sur Paris. は、「La région parisienne (パリ郊外)」も含み、

さらには「un passage de courte durée (短期間の滞在である) 」というニュアンスも加わるそうです。

人によっても前置詞「sur」のニュアンスは異なりますが、文法的には誤りとされている表現も、ニュアンスの違いにより区別されていることがわかります。

日本語でも誤った言葉使いとされていた「ら抜き言葉」が徐々に普及していく流れ、のようなものがありますが、

フランス人が頻繁に使う表現に注意してみると、フランス語の教材とは異なるおもしろい発見があるかもしれません。