バターをたっぷり溶かしたフライパン。
ふつふつと煮立ってきたところに、半分にカットしたバナナを投入。
お砂糖をまぶして、バナナの表面がキャメル色になってきたら…。
本来はここで、フライパンにラム酒をまわしいれて点火し、アルコールを飛ばして完成。
バナナフランベという名のフランス家庭ならではのデザート。
ところが、私が滞在していた家庭では、最後の仕上げが印象的でした。
キャメル色になったバナナをお皿にとりだしたら、みんなダイニングテーブルで待機します。
そしてダイニングのライトを消して真っ暗に。。
しばらくすると、家の主人がちいさなちいさな片手鍋を持って近づいてくるのです。
鍋からは、ひらひらとした青い炎が浮き立っている。
そう、弱火でじっくり温めてから点火したブランデー。
お皿のうえに鍋をそーっと傾けると、青い炎がバナナのうえに。
真っ暗いダイニングテーブルを囲みながら、ほんの数秒のあいだ、ゆらゆらとした青い炎に息をのむわたしたち。
またたく間に炎は消えて、代わりに、ほんのりとしたブランデーの香り。
ダイニングの灯りがふたたびともり、それぞれのお皿に、とろとろのバナナをとりわけます。
幻想的な青い炎を胸に、異国の香りにつつまれたデザートをナイフフォークでいただくのでした。