フランスは、香りのいいものにあふれている。
そう思ったのは、日本に帰国してからのこと。
パリでお気に入りだった紅茶の風味が、どうもおかしい。
お花やフルーツ、スパイスの香りを楽しんでいたクスミティー。
どこか、薬草のような風味がきわだつ。
なぜなのだろう。
ところが。
食後にいただく緑茶の苦味が、とてもおいしい。
気がつくと毎日、食後には緑茶の習慣がねづいていた。
歳をとったのだろうか。
香水、柔軟剤、ルームフレグランス。
パリで愛用していたものから、どんどんはなれていく。
そして思った。
空気がちがうのだ、と。
フランスの乾燥した大地、空気のなかでは、
香りが生きる。
香りにいやされ、ここちよさを感じる。
湿気をふくんだ日本の暮らしでは、
においを消すことで、空間を清潔に保とうとする。
無臭をこのむ文化がある。
パリの街を歩いていると、
パン屋さんはもちろんのこと、
通りがかったブティックからもいい香りがする。
香りの文化は、気候とともにあるのだろう。