フランス人の爪は〇〇みたいに短い

 

 

C’est joli, ça!(すてきね!)

きれいな白髪のマダムが、わたしの足もとを見て声をあげました。

パリ郊外の交差点で、信号待ちをしていたときのことでした。

 

猛暑がパリを襲った8月、めずらしくサンダルをはいていたわたしは、まためずらしくペディキュアをぬっていたのです。

Anna Suiのキラキラとしたブルーのマニキュアは、お気に入りでした。

 

ところでフランス人の爪は、みなピアニストみたいに短く、フレンチネイル、という名の指先など見かけたこともありません。

 

パリ暮らしがながくなるにつれて、ネイルをしなくなったのはなぜなのだろう。

肌も爪も、ほどよく自然のままがいい。

そういう感覚がフランスにはあるのかもしれません。

 

日傘をさしているひとはいないし、エステに夢中な若者にも出会ったことがありません。

爪は短くきりそろえて、やすりで断面をととのえるだけ。

 

ネイルをやめて、早20年。

爪は健康のバロメーターに。

 

冷蔵庫をあけると、いまでもAnna Suiのブルーのマニキュアがあります。

ふと、ネイルをした瞬間の、爪が呼吸できなくなるような感覚を思い出しました。